第5章 金曜日
全蔵は袱紗を錦百合の傍らに置いて薄笑いした。それを横目にギブスで固定された首を撫でさすりつつ自分のベットに戻った銀時が、また怠そうな顔をする。
「物好きだねえ、ハットリくんは。そんなにヒゲ子が気に入っちゃったの?やっぱり黙ってても最短距離で二丁目に行っちゃう人は違うね。言っとくけど悪食も極まると逆に美食家みたいに見えちゃうから不思議、なんて事ないからね?お腹壊す前に嗜好を変えた方がいいんじゃないの?」
「別にヒゲ子がどうこうじゃねえよ。俺はジャンプに伸び伸びしてて欲しいだけだよ」
「PHPか?アレよく読むと面白いよね?人生子供時代からやり直したくなっちゃう」
「何もかも手遅れだってのに気付いたら死にたくなるぞ。アンタはもう読まない方がいいな」
「・・・空気みたいに煙草吸ってガンガン寿命縮めてる人にそんな事言われたかないなあ・・・あはは・・・」
「長谷川さん、アンタPHPまで立ち読みしてんのか・・・・どんだけ暇で寂しいんだよ?やっぱさっきのヤンジャン養子にとれよ?な?」
「ありゃもうハットリくんが親元に返しちゃったじゃん。お前こそスピリッツと養子縁組したら?いい親子になると思うよ、近藤」
「・・・おーい。誰がいい加減で俺を下ろしやがれ。頭がぼうっとしてきちまったィ・・・・」
「・・・・・錦百合の花言葉をご存知ですか?」
一人真顔で鉢植えを見詰めていた河合が不意に誰にともなく聞いた。
「花言葉?知らねえよそんなモン。てか普通見舞いに鉢植え持ってくる?病院に根をおろせってか?暮らせってか?安住しろってか?出て来んなってか?ちょっと世間知らずが飛び抜けすぎじゃない?アンタの彼女?」
顔をしかめた銀時に河合は苦笑する。
「勝負。勝負の意味合いを背負った花なのです、これは」
「・・・・いよいよ何ソレ?何あのコ、エキセントリックプリンセス?銀さん今軽く貧血に見舞われたよ?この上まだ俺らを痛めつけたい訳?どんだけ血に飢えてんのよ、蹴鞠ヒゲ子は。おい、マヨネーズ、お前ンとこのドSの出番だぞ。ドSはドSで相殺だ。世の中がグンと穏やかになるぞ」