第4章 木曜日
「全蔵殿!」
「おぅわビックリした、バカ、至近距離で大声出すな河合。尻に響くわ」
「あなたの尻の事など今はどうでもいいのです」
「言うねえ。スゲエ気にされても薄気味悪ィがそこまで雑に扱われるのも腹立つな・・・」
「綾雁さんはNASAに連絡して・・・」
「なさ?ナサってNASA?は?お前のお姫さん、宇宙系?そっち系?毬を大気圏害まで蹴鞠っちまったか?それとも自分で大気圏外まで行っちゃう派?俺はその方面全然興味ないぞ」
「ハハハハハ」
「真顔で笑うな東京X」
「河合のヒゲァ立ち読み撲滅の為にNASAの切れねえ縄を発注しちまったんでさ。ククク。河合直伝の捕縛術で雑誌って雑誌に縄をかける気でいやがる」
「いやいやいや、ちょっと待て。切れねえ縄で縛ったら買っても読めねえんじゃねえのか?」
「切れるこたァ切れるでしょうよ。バカみてぇに苦労しなきゃねえでしょうが」
「・・・そんなモン誰が買う」
「買わないでしょうねえ。あの本屋ァ潰れんじゃねぇですか」
沖田は匙を皿にカランと投げ出して全蔵をじっと見た。
「河合のバカァ手前の不始末もあってお姫さんに会いにゃ行けねえって言いやがるし、俺ァ仕事絡みで大っぴらにゃ動けねえ。何せあのブタの父親は松平のとっつぁんの西のキャバ友だ。河合とブタァ知ってて余計なシガラミもねえ、しかもフリーターでフリーの忍者やってるアンタなら身軽に動けんじゃねえかと思いやしてね?」
「・・・フリーターでフリーの忍者な。そんな言われると何かすげェフリーダムな感じになっちまうなあ。実際はそんなじゃねえってのによ」
全蔵は苦笑して河合の前に真っ赤な皿を押しやった。
「食えよ」
「え?」
河合が熱い視線を皿に向けた。
全蔵は生温いお冷やを口に含んで立ち上がる。
「そいつを全部平らげたら、ヒゲ子も店も何とかしてやる。さ、俺ァ帰るぞ。勘定は東京Xにつけとけ。じゃあな」