第4章 木曜日
「おっと、鋭いとこをついてきやがった。ボウフラみたような頭ァしてますが、案外侮れやせんね、尻の旦那」
「・・・・ボウフラってどんなだった?こんなだったか?しかしお前、カレー屋で尻の話は止せよ。食う気が失せるだろ」
「俺ァ食う気なんざさらさらねぇから一向に構いやせんよ。まさか旦那はソイツを食う気なんで?スゲエな。尻が火ぃ噴いて吹っ飛びますぜ?」
「・・・・いよいよ何がしたいんだ、お前・・・」
「あれ?何がしてぇんだっけ?旦那、何でした?」
「お前もチーム211行きだ。全くジャンプ侍に関わるとロクな事がねえ。俺は帰るぞ」
椅子を退いた全蔵の傍らに、スッと背の高い店員が立った。
「お客様。お冷やはいかがですか」
全蔵は手を振ってそれを断る。
「いや、まだ何も食ってねえし、この後も食う気なんざねえからいらねえよ。てかむしろこの真っ赤ッかを早く下げてくれ。見てるだけで脂汗が出て来る・・・・・・・・・河合?」
ちょっと驚くような眉目秀麗な店員が頭を下げた。
何処かヒゲ子を思わせる品がある。
「御無沙汰しております、全蔵殿」
涼やかな目元に穏やかな笑みを浮かべて、河合宗良が全蔵をじっと見た。
ああ、こういうヤツだったな。綺麗な顔して人をじっと見やがるんだよ。そのせいか知らねえけど、モテることモテること・・・
全蔵は半ば呆れて河合を見返す。
「こっちゃいい迷惑だってのに、相変わらずの男振りだな河合」
「恐れ入ります」
「ここにこんな店員がいるなんてこたァ他言無用ですぜ、旦那」
スプーンで真っ赤ッかをグタグタかき混ぜながら、沖田がにっこり笑う。
「拾いもんでしょ、この店ァ」
「・・・お前も綺麗な顔してつくづく食えねえな。俺に何をさせようってんだ?」
「なァに、大したこっちゃありゃしません。おい、河合」
沖田に促されて、川合は一礼して全蔵の隣に座った。