第4章 木曜日
「何がしてぇって、昨日話したじゃねえですか。頭まで痔が回っちまったんですかい、尻の旦那?」
「尻の旦那は止せ。話って昨日激辛が売りのカレー屋でしたアレか。匂いだけで尻が痛むようなとこでまともに話なんか聞けるかよ。三途の川原みてェなとこに連れてきやがってこのサディストが。話なんざ皆忘れた。何も見てねえし聞いてねえ。知らねえよ、俺は」
「安心して下せえ旦那。俺ァ人にモノォ思い出させんのも得意でね」
愛刀菊一文字RX-7をチャキと逆手に構えて、沖田はじっと全蔵の臀部を凝視する。
「・・・おい止めろ。その熱視線だけで立派な傷害事件になるぞ。わかった。わかったからこっち見んな、本当に見んな」
「思い出しやしたか?」
「思い出した。スゲエ思い出したから安心してその物騒な得物をしまえ」
全蔵は溜め息を吐いて外に出た。
昨日土方と銀時が救急車で運ばれた後、全蔵は沖田に引き摺られてミノダス王というどこかのグルメ蘊蓄漫画で見たようなカレー屋に連れていかれた。
「俺の奢りでさあ。たんと食いなせぇ。そいつぁこの店のオススメですぜ」
全蔵の前に置かれた白飯に真っ赤なものがかかった一皿を指差して沖田はにっこりした。
そんな彼の前には平べったいパンに真っ赤なものが副えられた一皿がある。
「・・・お前の頼んだソレは何?」
「ああ、こいつァ人の食うもんじゃありやせん」
「・・・俺に頼んだコレは何?」
「そいつぁこの店のオススメだって言ってんじゃねえですか。さ、食って下せえよ」
「お前のと俺のとどこが違うの?人の食うもんじゃねえソレと店のオススメだっつぅコレとどこが違う訳?」
「何言ってんですかィ。全然違うじゃありやせんか」
「俺には飯とパンの違いしかわからん」
「正解でさぁ」
「・・・お前ちゃんともの考えてるか?脊髄反応でドS行為に突っ走ってるだけじゃねえのか?」
「旦那は違うんですかィ?」
「違うな。全然違うな」
「旦那は選ばれし者じゃねェんだ?恐怖の大王が降って来た日にゃウチのマヨネーズと瞬殺されるクチですかィ。可哀想に、笑いが止まんねえですよ、全く」
「用があんなら早く言え。俺はもう帰る事しか考えられなくなって来たぞ」
「そいつぁいけねえ。さ、早ェとこソイツを食らって下せえよ」
「・・・お前完璧に目的を見失ってねえか?」