第39章 月島蛍は審神者である。3
一一月島にも山口に云わない秘密や事情がある。
それを察せられるだけまだましだ。
その気配を感じたら山口は手を引く。
不用意に踏み込むのは得策ではない。
取り敢えず自分も身を清め云われた通り荷物は施錠される前に持ち出しておこう。
山口はそっと身を引く。
さああゝ一一、
暗い電気の落とされた旧館。
その中に水音が響いていた。
やはりか。
合点して月島は一番隅の部屋を開けた。
仕切りの中には水に身をさらす山姥切がいた。
一糸纏わずともソレはやはり刃の輝きを失ってはいない。
一一むしろまんば布が無い今、山姥切の美しさを隠す物は何も無かった。
一瞬目を奪われる月島だが我に返り水を止める。
「風邪ひくよ」
一体どれ程水を浴びていたのか、蛇口をひねる時に一瞬触れた肌は冷たかった。