第39章 月島蛍は審神者である。3
「身を清めないと月島の家に入れない」
暗がりの中で猫の目の様に碧の眼が輝く。
それはえぐり出したい程に美しく一一月島はやはり一瞬目を奪われた。
「もう十分でしょ、帰るよ」
白い肌に持ってきたタオルを被せる。
「月島……」
「違う、から。そういう意味で云ったんじゃないし」
一一ただ美しい山姥切が衆目に晒されるのが面映ゆい。
ただそれだけの嫌味が山姥切をこんなにも駆り立ててしまった。
それを悔いる程には月島は山姥切を一一。
「では、もう月島の部屋に入っても構わないか?」
濡れた体をタオルで隠しながら山姥切。
頷く月島。
ホゥ、と山姥切が息をつく。
「御免」
月島が不意に呟く。
「ん?」
わしわし髪を拭いていた山姥切が振り向く。
「何でもないッ」
「月島、待たせてすまない」
「一一……ッ」
どこまでも低姿勢な山姥切に月島も何やら堪忍袋の緒が切れそうになる。
一一ちょっとは僕を責めろよ!
暗闇の中では赤らんだ頬も見えないだろう。
だから月島は一一。
「帰ったらちゃんと風呂入ろうな」
早く帰って温めてやりたい。
「や、やっぱり俺が写しだから臭いんだな……」
再び項垂れる山姥切に月島は向こう脛を蹴り仕切りから出た。
「早く帰るよ」
「ああ」
ただ二人には言葉はいらない。