第36章 月島蛍は審神者である。
「はて、何やら随分閑散としているが他の刀は?」
雅にしゃなりしゃなりという擬音が付きそうな動作で三日月は山姥切を見る。
山姥切はその視線に気が付きまんば布を深く被った。
「山姥切国広が初期刀で三日月宗近様は二振り目の刀です」
元気いっぱいこんのすけが答える。
「ほう……」
答えながら手を上げる三日月宗近。
誰もがその手に注目する。
「察しの悪い童子だ。扇を持て」
三日月が月島を一瞥して云う。
月島はムッと眉を寄せながらデスクの引き出しを探る。
(兄ちゃんが夏祭りに行く時に買ってくれたのが確かあった筈……)
それを見つけ渡すと、ふぅ、と上から月島を見下し三日月は山姥切に向き直った。
扇の先でまんば布を避ける。
咄嗟の事に動けない山姥切の金糸の如き髪、剥いたばかりの白桃の様な瑞々しい肌、まるで磨いた緑柱石の瞳、白い肌に影を落とす睫毛まで余す事なく衆目に晒された。
「…………ッ?」
はくはくと口を開き酸欠の様に赤くなる山姥切。
「中々に美しいな……山姥切国広と云ったか……」
バッと扇を広げあおぎながら三日月宗近。
「……なっ、なっ……俺は綺麗じゃないっ」
急いでまんば布を被ろうとする山姥切に三日月の柳眉が寄る。
「俺が許す。その貌晒しておくが良い」
云いながら腰の刀に片手を当てる彼。