第2章 ~第二章~騎士と主
ゼノ「…あぁ、たぶんお前の想像している通りだ」
「俺はユーリの母親と、ユーリが城下へと降りた後…城下視察の際には、二人の様子を周囲の人達から聞いていた」
「…他にも、視察に行く時間のない時には、アルに様子を見に行くよう頼んだりな」
そう言って優しく笑うゼノ様から、どれだけユーリを大切に思っているかが伝わってくる
ゼノ「でも、もしユーリが弟だからという理由で俺が助けたと思えば、ユーリは俺のことを信用できなかっただろう」
「えっ…?では、ゼノ様がユーリを助けた理由は違うのですか…?」
ゼノ「…あぁ、俺はこの国を大切に思っているからな。王として、俺はユーリと血が繋がっていても、そうでなくてもユーリを放っておけなかっただろう」
ゼノ「それともプリンセス…お前は、目の前で小さな子が母を亡くし、震えているのを…見て見ぬふりができるか…?」
そう言ってゼノ様は、私に射抜くような視線を向けた
「…いいえ、私がもしゼノ様と同じ立場なら、私も同じことをしました」
そう言ってゼノ様をまっすぐ見つめながらハッキリと応えると、ゼノ様はふっと頬を綻ばせた
ゼノ「…ユーリは、素敵なパートナーを得たようだな」
「え…?」
ゼノ「いや、何でもない。それにユーリまで、国同士の問題に巻き込まれて欲しくなかったからな」
そう言った後、ゼノ様は僅かに眉を寄せて小さく溜め息をついた
(ゼノ様…?)
不思議に思い、私が首を傾げるとゼノ様は小さな声で呟いた
ゼノ「…それに、あいつのことだから何かあれば、また一人で突っ走り兼ねないからな」
「…言われてみれば、確かに……。」
そう言って私が苦笑すると、ゼノ様は真剣な顔で私を見つめた
ゼノ「…そうならないよう、これからはお前が止めてやってくれ」
「ゼノ様…」
ゼノ「弟を頼むぞ、プリンセス…いや、ユヅキ。」
そう言ってふっと笑みを浮かべながら、部屋を去って行くゼノ様の耳には、ユーリとお揃いのピアスが輝いていた