第1章 わたしの
わたしだって章ちゃんが泊まりに来るのも、わたしが泊まりに行くのも、好きだった。
寝付くまでずっと2人でおしゃべりしたりして。
でも、
いつからか出来なくなってしまった。
章ちゃんの隣はとても心地よかったのに。
いつも落ち着いて、ぐっすりと寝れていたのに。
なのに、
今はこんなにも、苦しさを感じてる。
章ちゃんの隣は、心地が良くて、苦しい。
理由はもう分かってる。
分かってるから、余計に苦しさが増す。
こんなことなら気づかないでいたかった。
「しーちゃん?」
なかなか家に入らないで黙りこくっているわたしを不審に思ったのか、章ちゃんが首をかしげる。
「どうしたん?」
「…なんでも、ないよ。じゃあ、また明日…」
それ以上何も言われないように、軽く手を振り、先に家に入った___
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「お母さん」
「うーん?」
寝る前にお母さんに声をかけた。
「わたしがバイトしたいって言ったら…どうする?」
「断る」
「早っ!!」
音速だ!光速か??!どっちだ??
「お父さんも反対」
ガラッと風呂場に面している扉が開き、お父さんが出てきた。
「なんで?」
「あんた、身体丈夫じゃないでしょ」
「うっ」
「両立とか苦手だろ」
「うっ」
さすが両親。
見抜いていらっしゃる…。
「まぁ、あんたが働かなくてもまだやっていけてんだからバイトしなくて大丈夫よ。」
ふふふ、とお母さんが笑った。
「まぁ欲しいものがあっても小遣いじゃすぐには買えなかったりするかもしれんが…我慢するとか、一応相談もしたらいいから」
とお父さんが言ってくれる。
「うん…ありがと。おやすみ」
やっぱりわたしには無理か〜
章ちゃんと一緒にバイトってのも憧れたけどねぇ〜…。