第3章 一学期
「しぶやーーーん!よこちょーーーー!!」
隣の教室から丸山くんがパタパタと近づいてきた。
村上くんも一緒だ。
「ヒナぽんは?手」
兎希が村上くんに聞くと、村上くんが手を見せてきた。
「汚っ!そのまんまかーい!」
村上くんが手を兎希に向けて迫る。それを「うえ〜」と言いながら兎希が避ける。
「そのまんまちゃうで。これでも洗ってん」
「……きみたたちを見てごらんよ。洗ってるってのはああいうことを言うの」
うっさいのお。と村上くんが兎希にブツブツ言ってると、章ちゃんが階段の方から走ってきた。
「借りてきたでー!」
ほい、と横山くんと渋谷くんの間に章ちゃんが何かを置いた。
「サラダ油?」
章ちゃんに聞くと、
「坂本せんせーがな、サラダ油でオイル浮かして、石鹸で洗って、あったかい水で洗ったらいけるって聞いたことある言うてたやろ?やから借りてきてん」
と言った。
…え?この短時間で?
サラダ油って多分家庭科室とかだよね?まだわたしたちは使ったことないのに…。鍵借りて行かなきゃだし、距離も近くないのに…すごいなぁ、章ちゃん。
「さすがヤッさん!」
兎希に褒められて、「へへっ!」と笑う。
兎希に他意がないと分かってても、わたし以外の女の子に褒められて嬉しそうに笑うのを見るのはあまり………いや、章ちゃんが褒められてることは凄く嬉しい。嬉しいんだけど、少し、モヤッとするというか……。
…嫌なわたしだ。
村「温かい水は?ここ普通の水道やで?」
安「あっ、」
村「『あっ、』ちゃうわ!」
パシン!と村上くんに章ちゃんが軽く叩かれた。
思わず「あ、」と一歩踏み出す。
丸「まぁまぁ!よこちょと渋やんはまぁまぁ落ちてきてるし、サラダ油でしたら大丈夫やって!」
落ちる落ちる!と丸山くんがにこやかに言う。
村「ほんま詰め甘いわあ!」
兎希「文句言うくらいならサラダ油使うなよ」
村「なんやて?」
兎希「わあ?!ちょっと!ほんまその手近づけんといて!」
ふと見ると、村上くんと兎希の楽しそうな?様子を渋谷くんがじぃ、と見てた。
……??
どうしたんだろ?