第5章 コビーの好きな人
そないやったらは菜園で紫蘇を摘んでいる。
食欲のない患者向けに粥を作っていて、薬味として紫蘇を添えると食欲が湧くと聞いて、急いで菜園へ来たのだ。
ところが、紫蘇を前にした途端、昨日の感情が大きな波となって蘇ってきた。
「リカさんって、可愛いのかな」
急がなければ間に合わない。手はどんどんと動かしていく。
けれども、どうしてもコビーのことが頭から離れない。
それに、あんなに激しい嫉妬を覚えたのも初めてで、ずっとモヤモヤしたものを抱えている。
「コビーさんの話をよく聞かないで、どうしてあんな事言っちゃったんだろ。わざわざ会いに来てくれたのに」
一人でブツブツ呟くそないやったらの頬に、涙がこぼれた。
慌てて涙を拭う。
「ダメだなぁ。コビーさんに謝りたいな。でも、どうしよう」
また涙が溢れる。
そないやったらは頭を振ると、すっくと立ち上がり、調理場へと走って戻った。