第1章 烏野高校バレー部、始まる
「翔ちゃん…っ!待って!」
宮城県立烏野高等学校は家から自転車で一山越えて30分のところに位置する。
私と翔ちゃんは春からこの高校に入学することになった。
「美月はゆっくり来ればいいって!」
「やっ、やだよ!おいてかないで!」
翔ちゃんと私は家が近所で幼馴染。
小さいころからずっと一緒にいる。
そんな中、“小さな巨人”に憧れた翔ちゃんは烏野高校への進学を選ぶ。
家族のような存在の彼と離れたくないと考えた私は、同じ高校を進学先に選んだ。
しかし。
「まさかこんな…通学が大変なんて…」
「だからさ、美月はバスで通いなよ!」
普通ならばバスで通う道のりを彼は自転車で通おうとしている。
高校でバレー部に入部するにあたり、体力作りの一貫なんだとか。
「~~~っせっかく同じ高校にしたのに!一緒に通いたい!」
「うぉっ!わ、わかったよ…」
突然大声を張り上げた私に翔ちゃんは肩をびくっと震わせた。
今日、入学式が終わったら電動自転車を買いに行こうと心に決め、
あと少しで達する山の頂上へ、強くペダルを踏むのだった。