第3章 カラスとネコと
(負け…た。)
美月は身動きできず、パイプ椅子に固まっていた。
「もう一回!」
声が響く。
「もう一回、やろう!」
日向の凛とした声に、猫又が答えた。
「おう、そのつもりだ。もう一回があり得るのが、練習試合だからな」
(あぁ、そっか。これで終わりじゃないんだ)
鳴り響くホイッスルに中学の大会を思い出してしまっていた美月は
緊張を緩める。
「美月ちゃん、次の試合の準備」
「あっ、はい!」
清水に肩を叩かれ、急いで準備に取り掛かった。
(そうだ、何度だって戦えるんだ。
それなら私はマネージャーとして、何度でも皆を支えたい…)
改めて胸に誓った美月は、腕いっぱいのタオルを持って部員たちに駆け寄った。