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【黒子のバスケ】初心な二人

第3章 最初のキスは頬からにする


「ご、ごめんね。遅くなっちゃった」

約束の時間から数分遅れてやってきたなまえに見惚れてしまった。
少し遅れそうと連絡がきた時は珍しいなとしか思わなかったのだが、そうか、これが理由だったのか。

「なまえ、浴衣着てきたのか」

「えっと、変…かな?」

心配そうに見上げてくる和服姿のなまえは大層可愛くて。
いや、いつも可愛いんだが、より可愛らしく感じた。
紺地に青い花柄模様の落ち着いたデザインの浴衣はなまえによく似合っていて、整えられた髪にまたドキッとした。
和服効果なのだろうか、それとも普段見えない項が見えるせいなのだろうか。
可愛らしさの中にある色気に照れて、つい顔を赤くした。

「いや、似合ってる。可愛い、よ」

「よかった。慣れてないから、悩んだの」

なまえの顔も赤い。
祭りで飾られた提灯のせいではないはずで、彼女も恥ずかしいらしいと伺えた。
照れ隠しに髪をしきりにいじっているし、間違いないだろう。

「ごめん、部活終わってそのまま来たから汗臭いかも」

人がごった返しているし蒸し暑い。
涼しげななまえと俺とは正反対だった。
遅刻しない為とは言え今更気になって謝ると、ぐいっとTシャツの裾を引っ張って真剣な顔…というか、必死な顔をしているなまえがいた。

「謝らないでっ。全然汗臭くないし、俊くんの匂いがして私は好き、だ、し…」

これはだいぶ嬉しい。
勢いよく捲くし立てていたが途中で我に返ったのか、一気にかぁっと顔を赤くしたなまえが俯いた。
きっと顔を見られたくなかったんだろう。

遠回しに俺が好きだと言ってくれている気がして、言葉では言い表せない喜びが湧き上がってきた。
どうやら彼女は俺を喜ばせるのが上手いらしい。

「ありがとう」

心から微笑めば、未だ火照った顔で微笑み返してくれたなまえといつものように手を繋いだ。
いつもより少し体温が高く感じるのは祭りのせいか火照りのせいか。

「まだ花火まで時間あるし、屋台でも見て歩こうか」

「うん。私わたあめ食べたいっ」

なまえが歩く度にカランコロンと下駄がなる。


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