第3章 最初のキスは頬からにする
今日は花火大会がある。
自主練の時間をカットすれば充分参加出来る開始時間だったので、予定通り自主練を省いて待ち合わせの駅に向かっている。
一緒に行くのは勿論彼女であるなまえだ。
誘ってくれたのは彼女だった。
「今度花火大会があるんだけど、俊くん一緒に行けないかな?」
いつも部活中心な生活を送っている俺に、なまえは遠慮がちに聞いてきた。
大事にしたいとは思っているが、なかなか二人の時間がとれないのは常々申し訳なく、それを酌んで我が儘一つ言わないなまえに感謝もしていた。
少しでも彼女に応えたくて、可能な限り時間を作っては和やかな時を過ごした。
「寂しくないってわけじゃないけど、バスケ頑張ってもらいたいし、バスケしてる俊くん好きなの」
そう言って応援してくれているなまえからの初めてのお誘いだ、嬉しいに決まってる。
今まで我慢させた分も含めて楽しんでもらいたかった。
Tシャツにハーフパンツとラフな格好になってしまったが、家に帰って着替える時間はなかった。
それでは遅刻してしまう。
駅に着いて時計を見れば待ち合わせの15分前。
少し早かったようだが、遅れてなまえを待たせるよりマシだ。
会える時間が待ち遠しい。
待つというのも悪くないものだ。