第53章 バレンタイン企画

黒尾の場合






「俺のカノジョ、どこに連れてく気かな？」

ああ、あの真っ黒な笑顔。
向けられてるのが私じゃなくてよかった。

やや怒気を含ませた声に、二人組は途端に逃げて行った。

「お前、今日早いよな？」
『……そんなこと』
「あるだろ？」

うっ、と言葉に詰まったのを見て

「そんなに楽しみだったのかな？かなたちゃんは」
『……』
「え。マジで」

なんて、聞いておいて少し照れたクロの裾をキュッと握った。

『…デート…楽しみだった。クロは…違うの？』

と、珍しく素直に言ったら目元に手をあて空をあおいだ。

『？』
「あー！クソ！可愛すぎる！」

急に抱きしめられて私の肩におでこをぐりぐりとしてきた。
…照れてる？

『あ、あとね』
「？」
『さっきは、ありがと。クロ、カッコよかった』

すると更に抱きしめが強くなり、何やら首筋に鼻を押し付けてきた。

「…なぁ、じゃご褒美くれよ」
『……はい？』
「かなたからキスして」
『な！そ、そんなの』
「…」

ず、狡い！
こんな時だけそんな風に見ないで！

「だめ？」
『ここで？』
「ここで」

さっきは、会ってすぐに無理とか言ってたけど…
これって、そんな状況だ。



オマケ
(何で口じゃないんだよ)(頬っぺたでもキスです)(まぁいいや。夜の楽しみにしとくから)