Fall in love with you【R18】
第5章 five
ー嶋田ー
不自然なほどピタリと止まった動作。
彼女は、今なんて…
「『ハルさん』て人、ご存知ですよね。」
今度は質問ではなく確認するような聞き方。
その様子だともう気付いてるんだよね?
「…繋心の元カノの名前だよ。」
そう告げると優稀ちゃんの顔が悲しそうに歪んだ。
「そんな気はしてました。」
「…ハルのこと、繋心から聞いたの?」
そっと訊ねると弱々しく首が振られて、俯きながらだけどちゃんと話してくれた。
無意識でだろうけどそう呼ばれた、と。
俺の予想が当たっているとしたら、恐らく…
もしそうだとしたら、聞いてはいけない。
そんな気がした。
「烏養さんはまだ…すみません、何でもないです。」
席を立ち上がると荷物を持ちペコリと頭を下げた。
「忙しいのにすみませんでした。烏養さんには内緒でお願いします」
それだけ言うと彼女はバックヤードを出ていってしまった。
その場に残ったのは静寂と彼女のハンカチのみ。