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第11章 アカシックレコード


先程の無表情から一変し、
カズトラさんは生き生きとした表情で歌う、

その歌声は力強く、
思わず耳に残るような声だった。

ライブはTV越しにも伝わるぐらい
盛り上がっている様子だった。

「んで、こいつってゲームではどうなの?」
陽くんが優月さんの方を見た。

「んー…名前が有名なだけで、特に功績とかは聞いた事ないなぁ…。」
優月さんはぽりぽりと頬をかいた。

「謎に包まれた人物なんですね。」

私がそういうと、
優月さんは頷いた。

「ふぅーん。どんな奴か気になるな!会えるの楽しみだ!」
陽くんはニカっと笑った。

「そうだな。」
優月さんも小さく笑った。

でも、その笑顔には
元気がない…というか、

やはり、少し疲れているようだった。

「あ!そろそろ帰りますね!」
私はすぐに立ち上がり、そう言った。

「ん?あ、あぁ。じゃぁ、送るよ。」
優月さんはTVを消すと、
カウンターから出てきた。

「あ。俺が雛は送るよ!おっさん!」
陽くんは椅子から飛び降りた。

「…そうか。わかった。頼んだ。」
そう言って優月さんは静かに笑った。

そうして、
私と陽くんはお店を後にした。

陽くんの自転車の後ろにまたがり、
夜のひんやりした風を体に受けた。

「なぁ、雛。」

陽くんがポツリと呟く。

「ん?」

「ちょっと寄り道していいか?」

その問いかけに、
私はうなずいた。

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