第11章 アカシックレコード
優月さんが話し終わると、
シーンとした沈黙が訪れた。
「…やっぱりおっさんは悪くねぇじゃねぇか。」
しばらくすると陽くんはポツンと呟いた。
「陽…。」
優月さんは悲し気に陽くんを見た。
「俺の空っぽの頭フル回転させてみたけどさ…もし、おっさんがその"器"って奴の候補じゃなかったら早々にその女に殺されてたんだ。結果は同じ。全滅だろ?」
陽くんは眉間にシワを寄せた渋い顔でそう言った。
「それに、もしおっさんがその男に光って奴殺さない代わりに"器"になれって言われてたら、おっさんはどうせ"器"になったんだろ…?どうせおっさんがどの役になっても話は変わらなかったんだ。」
「だからさ、逆におっさんが生き残ってよかったんじゃねぇのかな?だって…ちゃんと仲間のために復讐しようとしてんじゃん。」
陽くんはそう言ってうつむいていた。
「もし、俺がおっさんだったら、きっともう怖くてゲームなんて続けてねぇよ。だからおっさんはすげーよ。胸張っていいと俺は思う。」
その陽くんの言葉に
少しだけ優月さんの目がうるみはじめていた。
「…陽くんの言う通りですね。私もそう思います。そんな優月さんだからこそ、仲間は優月さんを信頼して…一緒に戦ってくれたのではないでしょうか…。きっと悔いはなかったと…思います。」
「…雛。」
優月さんはうつむいた。
「…まぁ、これからどうするか…だよね。樋渡はかなり厄介な相手だ。俺はあいつには関わりたくないね。」
蘭丸さんは煙草の煙を吐き出した。
「…樋渡は…俺が倒すよ。」
優月さんはそう呟いた。
「…殺れんのか?」
蘭丸さんは鋭い目で優月さんを睨む。
「…決着はつけなきゃならない。きっと光だってそれを…望んでいる。」
優月さんの目からは
涙が溢れていた。