第10章 OLDEN DAYS
「まず、今日会った男。あいつは言霊使いの樋渡光(ヒワタシ コウ)俺の、元友人だ。」
「元…友人?」
「そう、でも、言霊使いの方は俺の友人だった樋渡とは全く別人だ。」
優月さんの言っている意味が分からず首を傾げる。
「わからないと思うが…最後まで聞いてくれ、話は4年前にもなる…」
優月さんは静かに語り始める。
「俺はその当時、大学に通ってた。する事もなく…ただ、興味本位であのゲームを始めた…そこで出会ったんだ。あいつと…。」
~4年前 優月~
現実世界では真夏でじりじりと熱い日差しが
毎日のように俺たちの体力を蝕んでいた。
「あ~。あっちぃー。」
薄い教科書をウチワ代わりに使うが
風は生ぬるいものだった。
「優月ぃー、今日17時からギルド戦だからゲーム入れよ。」
友人の圭太に肩を叩かれた。
「あー、わぁってる。」
ゲームをはじめて数ヶ月。
俺はあっという間に強くなった。
少しずつだが
ギルドの名がゲーム名に知れ渡っていた。
そのギルドマスターである俺の名も
知れ渡っていた。
現実では認められる事のない凡人の一人だった俺が
ゲームの中では有名になれる。
すこしだがその優越感に調子に乗っていた。
その日のギルド戦だって
楽々勝つことが出来た。
ゲームを終えて
現実に戻る。
ゲームでは4時間はたっていたであろうに、
現実では一瞬だった。
どっと疲れが急に押し寄せる。
俺は自分の部屋を出ると、
お気に入りのカフェへと足を運ぶ。