第9章 狂った世界。
「おっさん!?どういう事だよ!?」
陽くんは優月さんに掴みかかった。
「その言い方は語弊がある。黒雷ちゃんは人殺ししたわけじゃない。」
いつの間にか蘭丸さんもお店に居た。
「…カラス…。」
優月さんは蘭丸さんの方を悲しげに見つめた。
「…詳しく話してもらえませんか…?」
私は意を決して聞いてみた。
真実が知りたかったから…。
「…俺のギルドのメンバーは俺以外…全員死んだ。でも、俺だけ生き残ってるんだ。俺はあの時…逃げ出したんだ。戦場から…。俺は仲間を見捨てて…一人だけ生き残ったんだ…。」
優月さんはポリツとそう言った。
「…。」
「結局、あいつらを殺したのは俺で間違いない。あそこで俺が逃げ出さなければ…何か…変わっていたのかもしれない…。」
「だぁぁぁぁぁ!!!!」
陽くんは突然叫んだ。
「おっさんが全部悪いわけねぇよ!生きたいと思うのは普通だ!それに、おっさんまで死んでたら…結局全滅だったわけじゃねぇか!そんなの…人殺しって言わねぇよ…。」
陽くんは優月さんに掴みかかった手を
ゆっくりと解いた。
「…でも、光は俺のことを人殺しと言ったんだよな…?」
優月さんは悲しそうな顔で私を見た。
「コウ…?」
「あれは本当に樋渡なのか?」
蘭丸さんは眉間にシワを寄せた。
「ヒワタシ…?」
「…わからない。でも、光なんだ。確かに…」
優月さんはうつむいた。
「…お前ら何の話してんだよ。俺たちにもわかるように話せよ!」
陽くんは口を尖らせた。
私もじっと優月さんは見つめた。
「…話そう。昔あった話を…」
そうして、優月さんは深呼吸をした。