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天剣は春色を映して

第1章 第一章


「包帯濡れちゃったんだよなぁ・・・・・・僕の服も濡れてるし・・・・・・止血できるものは・・・・・・」
キョロキョロ辺りを見回す男性。


暗闇に目が慣れてきた私は男性の顔を見て息をのんだ。


――美形!!


見たところ、かなり若そう。
好青年。


群青色の和服を着ている。


「取り敢えず濡れた包帯で血を止めますね」
青年は私に手際良く包帯を巻きつけた。


青年の真剣な眼差しを間近で見て、この人と離れたくないと思った。


こんなに私に真剣に関わってくれる人など今まで居ただろうか。
しかもこの人にとって私は見知らぬ他人なのに・・・・・・なんで・・・・・・。


「少し待っていてくださいね」
包帯を巻き終わった青年は私から離れてどこかへ行ってしまった。


や・・・・・・嫌だ。
怖い・・・・・・。行かないで。


「行かないで・・・・・・」
青年には声は届いてないらしい。


置いていかれた・・・・・・。
怖い・・・・・・嫌・・・・・・一人にしないで!!


「戻りました」
青年が私に歩み寄って抱えていた大量の木の枝を地面に置く。


「よかった・・・・・・」
戻ってきてくれた。
涙が溢れる。


「マッチ、マッチ・・・・・・」
青年はマッチを探しているようだ。


「あ!マッチも濡れちゃったんだ・・・・・・」
青年はため息をつき、・・・・・・あれは・・・・・・日本刀!?


腰に差していた日本刀を鞘から抜き出した。


そして足元に転がっていた丸石を木の枝の上に置き、丸石を日本刀で斬った。


火花が走り、木の枝が微かに燃え出した。


そして青年は私に近寄り、


「少し暖まりましょう」
と微笑んだ。


「まずあなたの体温を上げなければ」
そう言うと青年が珍しそうに私を見た。


「洋風の服ですね。見た事の無い服・・・・・・」
と、私の服をしげしげと眺めていた。


青年の焚いた火が木の枝を全部燃やし、明るさと暖かさがこちらに届いてくる。


炎に照らされた青年は本当に美しい顔をしていた。


「あっ、僕、瀬田宗次郎って言います」
青年が微笑んだ。


「私は平成時音」


「よろしくお願いします、時音さん」
宗次郎が私に微笑みかけた。


体が、心が、微かに温かい・・・・・・。

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