第15章 〈南九〉あなたと共に
南戸はふっと笑って、久兵衛の頭を無意識に撫でた。
「な……」
「あ……」
南戸はパッとその手を離した。
(ヤベェ……)
ーー久兵衛は男に触られると、ぶん投げる癖があるのだ。だが……。
「……あれ?」
「……何だ?」
久兵衛はふるふると震えている。
「……若様、俺をぶん投げないんですか?」
「……ああ」
「……何でですか?」
久兵衛は下を向いた。
「お、お前は投げたくないからだ」
「……そうですか」
南戸は高揚する気持ちを抑えながら、話を切り替えた。
「それじゃァ、行きますか?」
「ああ」
2人はやっと歩き始めた。
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