第15章 〈南九〉あなたと共に
2人は歌舞伎町で1番大きいショッピングモールに来た。
「ところで若、買い物って何が買いたいんですか?」
「……え……」
久兵衛は南戸に突然質問をされて、下を向いてしまった。
「……特に……ない」
「え!?」
南戸は驚いた様子で久兵衛を見た。
「ないって……」
「……」
久兵衛は少し涙目になって南戸を見た。
「……」
(そんな顔で見られたら……)
ーおれの理性がどうかなっちまうじゃねェか。
南戸は困った顔で久兵衛を見た。
久兵衛はその顔を見て、少し慌てた様子で話し始めた。
「……すまない。やっぱり、目的がないと一緒に買い物に来ても意味ないよな……。帰……」
「いいですよ、若様。気にしないでください」
そう言うと、久兵衛は南戸を見た。
「おれ、若様とどこか一緒に行きたいと思ってたんで、ちょうどよかったです」
「そ、そうなのか?」
「はい」
南戸は久兵衛を真っ直ぐ見つめて言った。
「若様が何も買いたい物がないなら……俺に付き合ってくれますか?」
「……え?」
久兵衛はキョトンとした様子で南戸を見返した。
「俺、買いたい物があるんですよ。若について来てもらったら嬉しいです」
「あ、ああ、もちろんだ。僕は特に買いたい物はないし、ここまで連れて来て何もしないで帰るなんて、お前に悪いからな」