第15章 〈南九〉あなたと共に
「いえ、気にしてませんよ」
南戸は笑顔で答えた。
「……じゃあ、僕は……」
「あ、若」
九兵衛が立ち去ろうと腰を上げた時、南戸が声をかけた。
「若……気にならないんですか?」
「……何をだ?」
「……」
南戸は少し寂しそうに笑った。
「……何でもありません。引き止めて、すみませんでした」
「……邪魔をした」
九兵衛はそのまま、立ち去って行った。
「……邪魔をした、ね……」
南戸は寝転がって、天井を見つめた。
「もう少しだけ、ここにいて欲しかったなんて……言えねェや」
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