第15章 〈南九〉あなたと共に
「よし、今日はここまでだ。解散」
「ありがとうございました!」
稽古が終わった道場から、次々と人が帰って行く。
「若、お疲れ様です。お部屋に戻られましたら、お風呂に入ってください。お風呂はおばばが入れているはずですから。それから、着替えは……」
「北条、そんなことくらいわかっている。僕は僕のしたいように生活がしたい。少しの間、黙っててくれないか?」
「こ、これは失礼いたしました! そうですよね……若もいつまでも子供ではないですもんね……」
ほろほろと少し涙を流して、北条は感動している。
その様子を九兵衛は呆れた様子で見ていた。
「若」
タオルで汗を拭いている九兵衛を呼ぶ声がした。
「……南戸……帰っていたのか。また、女の子をナンパしてどこかへ行っていると思っていたが」
「聞き捨てならねェな〜。若は俺のことをそんな風に見ているんですか?」
「まあな」
九兵衛は冷たく返した。
「……」
(変わっちまったな〜)
ーすっかりたくましくなっちまって……。
「俺とは大違いだ」
南戸は嬉しそうに、だが、少しだけ寂しそうに笑った。
「……何が大違いなんだ?」
九兵衛は怪訝な顔をして聞いた。
「いえ、何でもありませんよ。若様」