第11章 〈土ミツ〉いとしすぎて
『お世話になってた近所のおばさんが毎朝来てくれてるんですよ』
湯飲みの水を変え、ロウソクに火を付ける。
「ミツバ……」
慣れた手つきで、土方はロウソクの火を線香に移した。
「俺は……お前に酷いことを言っちまった」
『酷いなんて思ってませんよ』
ーーあなたが優しくて不器用なことは知っていますから……。
「お前はもう、俺のことを……嫌いかもしれねェ。それでも……」
墓を見上げる。陽の光が輝いて、少し眩しい。
「俺はお前のことが好きだ」
『……っ』
ミツバは口元を両手で押さえた。目にはみるみる涙が溜まっていく。
「でも、まだそっちに行くわけにはいかねェ。近藤さんを守らなきゃならねェ。それに……」
土方は優しく笑った。
「あいつに、俺と同じ思いをさせたくねェ」
脳裏には総悟と神楽が喧嘩している姿が浮かぶ。一見、仲が悪く見えるが本当はそうでないことを土方は知っている。
ミツバは涙を流しながら、優しく微笑んだ。
「俺がこっちでの役目を全部終わらせたら……お前に会いに行く。それまで……待っててくれ」
目を閉じて手を合わせてから、土方はゆっくりと立ち上がった。