第11章 〈土ミツ〉いとしすぎて
太陽が暖かく照らしている午後。風が小さな花を揺らしている、少し細い道を1人の男が花束を抱えて歩いている。その道の先には墓地が見える。
「……よう、ミツバ」
土方はあるお墓の前に着くと、腰を下ろしてしゃがんだ。墓石の名前を見上げる。
『こんにちは、十四郎さん』
墓の傍らに立っていたミツバが土方に話しかける。
「近藤さんに、俺の代わりに行って来いって言われた。すまねェな。見たくない顔だろうに来ちまって」
『いいえ。私はとっても嬉しいですよ』
お墓の中台に激辛せんべいを立てかけて、土方は少ししぼみかけている花を抜き取った。代わりに持って来た青い花をさす。
彼にミツバの声は聞こえていない。
「地味な色で悪いな。これくらいしか、いい花がなかった」
『ええ、大丈夫ですよ。あなたが一生懸命選んでくれてたこと……知っていますから』
ミツバはクスリと口元に手を当てて微笑む。
「それにしても、総悟が武州に墓を残すなんて思わなかった。こっちには父上と母上がいるから、姉上もそっちの方がいいとか言ってたが……心配してたけど、墓の世話は誰かがやってくれてるっぽいな。安心した」