第9章 〈銀時〉振り向いてほしい
私は首を傾げて惚ける。
ーー本当は高校生だ。でも、お金がなくて学校には行けてない。大人っぽい見た目を活かして、仕方なく夜の街の仕事をしている。
「……じゃあ、もう仕事には行くな」
「……え?」
瞬きをして、彼を見つめる。
「また危険な目に遭うかもしれねェだろ。働くなら、下にババアの店がある。ババアなら、お前のことも守ってくれるだろうよ」
「……」
「お前、家はどこなんだ? 親は?」
「……親はいるけど、私のことを殴ってくるから帰りたくない」
「……そうか」
少年ジャンプを机の上に置いて、彼は足を下ろした。
「じゃあ、仕方ねェから日輪のとこか……お妙のとこだな。下の店で働くんなら、お妙のとこの方がいいかもしれねェけど」
「……ここは?」
「あ?」
立ち上がった男は頭を掻きながら、私の方を見る。死んだ魚のような目と目線が交わる。
「ここにいちゃ、ダメなの?」
「……ここは狭くて寝るところがねェからダメだ」
「そんなのどこでもいい! ここがいいの!」
「そんなこと言われても……」
頭を掻きながら、彼は困ったように顔を歪めた。
「ねえ、銀さん……」
私はソファから立ち上がって、彼の目の前へと移動する。