第8章 〈沖田〉今日こそは……
「ん」
「?」
総悟は扉を押さえて、私の方を見た。
「何でィ、乗らねェのかィ?」
「!?」
ーーつまり、彼なりのエスコートのつもりなのだろう。ーー先に乗れ、と。
「あ、ありがとう」
私は観覧車の中へ入り、その後総悟も中へ入った。
「ごゆっくり〜」
男のスタッフさんが鍵を閉めた。その時に、少しだけ顔が見えた。
「え、銀さん?」
その人は銀髪の髪に死んだ魚のような目をしている坂田銀時そっくりだった。
「坂田銀時? 誰ですかィ? 僕はただの……」
つらつら銀さんが何か言ってる間に、私たちを乗せた観覧車はどんどん上へとのぼっていった。
「未夢」
2人きりの空間で、総悟は私の名前を呼んだ。
「今日は……楽しかったですかィ?」
「う、うん!」
変な風に返事をしてしまったが、本当に楽しかった。こんなに楽しいデートは久しぶりだった。
「そうですかィ。そりゃ、良かった」
総悟は優しい笑顔で笑った。
ドキッ
いやいや、待って。私は今日、総悟と別れるつもりで来たのよ? でも……。
(好きなんだよな……)
ーー今日1日で気付かされた。改めて、総悟が好きなんだということ。