第8章 〈沖田〉今日こそは……
「……」
「……」
私たち2人は黙ったまま、観覧車だけが上へと進んで行く。
「あ……」
私は窓の外に広がる遊園地の景色を見た。まだ時間が少し早かったらしく、イルミネーションは始まっていなかった。
「……ねえ、総悟」
窓から目線を総悟へと移す。
「聞きたいことがあるんだけど」
「何ですかィ?」
いつもの意地悪な笑みではなく、優しく微笑んで総悟はこちらを見る。
ーーやっぱりカッコいいなー、なんて思う。
「……どうして……私と付き合ったの?」
「いきなりどうしたんですかィ?」
呆気にとられた様子で、総悟は瞬きをしている。
「……答えてくれないの?」
「いや、そういうわけじゃないですけど……」
口元を押さえて、目線を逸らされる。
「……じゃあ、今までデートに誘ってくれなかったのは?」
「……それは……」
総悟は窓の外を見た。
(どの質問にも答えてくれない……)
「……総悟は……これから、私とどうして行きたいの?」
「どうしてって……」
まだ窓の外を見たまま、総悟はこちらを見ようとしない。
「……もういい」
私は俯いて膝の上に置いていた手をギュッと握り締めた。
「私たち……もう別れた方がいいと思うの……」