第8章 〈沖田〉今日こそは……
3年間も付き合っていてなんだけど……不安になる。これまで、カップルらしいこともそんなにしたことがない。手は握ったことがあっても……キスも数える程度しかしてないし、抱き合ったことなんて……ない。
「……」
いつの間にか、目的地である駅に着いていた。時計を見上げる。
「……9時1分」
周りを見渡してみる。
「……いない」
いつものことだ。ーーいつも私が先に来て、総悟が遅れて来るのだ。こんなことはしょっちゅう。でも……。
「……心配になるな……」
「何が心配なんでさァ」
「わ!?」
私はびっくりして後ろを振り返った。
「……総悟」
「お前、来るの遅いでさァ」
「……私の方が先に来てたよ?」
「いいや、俺は8時半にここに来たんでィ」
「……」
私は空を見上げた。空は青く、雲は1つもない。
「……」
「お前……何してるんでィ?」
「いや……雨降らないよなって思って……」
「お前な……」
総悟がため息をついた。
「俺がそんな早く来ちゃ、ダメですかィ?」
「……ダメじゃないけど……」
天気が心配。
「まあ、いいや。ほら、行くでさァ」
総悟はそう言って、私の手を握って駅の改札口に向かった。