第4章 〈銀時〉白馬の王子とは程遠く
「よし、大丈夫だ。これでいいか?」
「……っ」
涙が溢れてくる。ただ怖かった。本当に……怖かった。
「もう大丈夫だ」
優しい声が降り注ぐ。収まるまで泣いて、しばらくして漸く落ち着いた。
「……大丈夫か?」
「はい」
久しぶりに発した声は涙声でガラガラだった。
「……明るい所まで送ってやるよ。家はどこだ」
「……帰りたく……ないです……」
ただのワガママだ。育児放棄をする親の所に戻りたくないという気持ちが強くなる。暴力をして来ないだけマシじゃないのか? 言葉の暴力はなかっただろ? 自分で自問自答する。
「……わかった」
男の人はそれだけ言うと歩を進めた。
「え、あの……」
「家に帰りたくないんだろ? それなら……」
顔がこちらを向くと、銀髪の髪が少しだけ揺れる。
「今日は俺の家に来い。14歳の女が1人いる。安心しろ、俺は何もしねェよ」
「……」
ーー甘えてもいいのだろうか……。
自然と涙が出て来る。
「あ、あの!」
私の前を歩く男の人に声を掛ける。
「な、名前は……なんて言うんですか?」
「俺か?」
男は振り向いて優しく微笑んだ。
「坂田銀時。侍だ」
「さむ……らい……」