第1章 〈銀魂〉まずは肩慣らし
「銀時!」
顔を覗かせたのは銀時だった。
(これで助かる……)
月詠が安堵して笑みを溢したのも束の間、目を大きく見開いて顔を青ざめた。
ーー銀時が神楽を担いで現れたからだ。
銀時はそのまま、神楽を館の床に少し乱暴に寝かせる。
「神楽!?」
月詠は神楽の名前を叫ぶ。しかし、彼女が起きる気配は全くない。
銀時は人狼と化した沖田を見た。
「あらら、随分とめんこい耳を生やしちゃって」
その顔は影があり、口は弧を描いている。ーーどうして、人狼を目の前にしながらそんな反応ができるのか。
「銀時!? 神楽は無事か!? ぬし、何故ここへ神楽を連れて来た!?」
銀時は月詠の言葉を無視して沖田を見ている。
「……旦那ァ、ソレは手土産ってことでいいんですかィ?」
沖田は嬉しそうに口角を上げて笑う。口から牙が覗いている。
「……沖田くんさァ、嘘つくの上手いよなァ……『俺が人狼だったら、真っ先にテメェから喰ってらァ』ってこいつに言ってたけど、本当は好物はとっておいて最後に食べるタイプだろ?」
ーーそこで、お前が人狼だって気付いたよ。
「ククク……旦那には敵わねェなァ」