第2章 桜色 さくらいろ 完
side:京楽春水
追い付いて来た春日ちゃんは、息を整えながら恨めしそうに僕を見上げる。
「もう、なんで置いて行くんですか?」
「固まってた君が悪いんじゃないかい?」
「それはそうですけど…。」
納得いかないのか、頬を膨らませて拗ねてる春日ちゃん。
そんな春日ちゃんにいたずら心を刺激され、また頭を撫でてやる。
「さくらちゃん拗ねないでよ。
ほら、よしよし。」
普段呼ばれない名前で呼ばれたからか、また固まってしまった春日ちゃん。
思った通りの反応に笑いが込み上げて来る。
笑われているのに気付いた春日ちゃんは、僕を睨む。
真っ赤な顔で、身長差のせいで上目遣いな春日ちゃんに少しドキリとした。
それをごまかすように、不自然にならない程度で顔を反らしまた歩き始める。
しばらく歩いた所で振り返らず、止まることもせず、立ち止まったままの春日ちゃんに声をかける。
「戻るよ、春日ちゃん。置いてくよー?」
「あ、また!?
もう、待って下さいよ!」
慌てて追いかけて来る気配がして笑う。
今日はよく笑う日だな。
「楽しいねぇ、春日ちゃん。」
「いつもそうやってからかって。
やめて下さいよ。」
「うーん、そーだねー。」
「やめる気ないじゃないですか。」
「ははは。」
「笑いごとじゃないですよー。」
飽きないねぇ、春日ちゃんをからかうのは。
もう少し付き合ってもらうよ?
僕のこの気持ちの答えが見つかるまでは、ね。
答えしだいではこのまま…、なんてことも。
「本当に今日はよく笑う日だねぇ。」
「隊長?」
「ん?なんでもないよ。」
平和だねぇ。
こんな時間が続けばいいのに。
また明日も桜を見に行こかな。
春日ちゃん、明日もよろしく頼むよー?