第4章 優しいキスをして〈4〉
「オレ、産まれた時から母さんに育ててもらってたやろ」
「……うん」
「ほんまの母さんやと思ってたん」
「……だろうね」
青木くんにどんな言葉をかけていいのか分からない。
慰めの言葉は違うような気もするし、かといって励ましの言葉も違うような気もする。
「オレが小学校に入学する時にホンマの事を聞かされたんや。正直……びっくりしたで」
話しの内容はとても暗いものだと思う。でも、彼は明るく話しを進めてくる。
「んで、その話を聞いてからオレ1週間くらいかな?……親と口きかんかってな」
「……やっぱり……ショック……だったよね」
今まで信じて疑わなった事が崩れたんだもんね。ましてや小学生なら……かなり傷付く。
私もそうだったから……
「1週間めっちゃ考えてな……オレ関西弁使うことに決めたんねん」
「……へ?……え……??」
「オレなりの答えが関西弁」
海から視線を私へと移した青木くんは、迷うことなく笑みを浮べていた。
「オレ、母さんも父さんも好きやねん。でも、おかんとおとんの事も忘れたくないねん」
「……それで関西弁?」
「うん。おかんとおとんが居てくれたからオレが産まれた。母さんと父さんが居てくれたから、オレが今ここにおる……4人の親に感謝しとるで……ほんまに」
どうしてなんだろう
なんで青木くんはそんなに強いのかな
「……まあ、ガキやったんだろな」
「子供?」
「おかんを忘れたなくて関西弁をつこうなんてな。発想がお子ちゃますぎやろ」
自嘲っぽく笑っているのに、私には晴々しく笑っているように見えて……
胸に痛みを覚えてしまう。