第3章 優しいキスをして〈3〉
「此処って……」
電車に乗ってやってきたのは海の近くにある霊園。つまりは墓地。
小高い丘に造られた墓地からは海も見える。静かでまるで時が止まっているかのような錯覚にさえ落ちそう。
なんだか落ち着く場所で心地いいな
それにしても何で青木くんは此処に私を連れてきたんだろう?
普通にデートする場所ではないよね?
私の手を引く青木くんは、迷うことなく歩いていく。すると、とあるお墓の前で立ち止まった。
誰が眠っているのかな
墓石の名前は青木ではないんだけど
「白石っちゅうねん」
「え?」
「オレ本当は白石陽斗っていうねん」
「……白石……陽斗……」
名字が違うのにびっくりしたけど、名前……はるとって言うんだ。
「オレのほんまの両親は此処で眠ってるんやで」
「……え?」
「おとん、おかん、遠坂凜さんやで。オレの大事な人や。よろしゅうな……」
墓前に手を合わせる青木くんに、私は突っ込みも忘れて固まってしまっていた。
──それから青木くんは目を細め、海を見つめて淡々と語りだした。