第7章 復讐の日
「明智政樹が働く建設会社の事務員の一人、九条香澄(クジョウカスミ)。まぁ、もうお前も気付いてると思うけど…香澄は俺の恋人だった。」
お父さんと香澄さんが同じ会社で働いていたなんて…記憶を無くした私は当然、知らなかった。
「ここからはシュリにとっては辛い話かもねー。明智政樹は香澄に一方的な好意を寄せていた。妻と娘がいながらね。そして明智政樹はついに過ちを犯した。」
「過ち…?」
「…香澄をレイプしたんだよ。」
黒川さんが低い声でそう言い放った。
お父さんが…香澄さん…黒川さんの恋人をレイプした…?
「うそ、でしょ…。」
「信じられないよなぁ?でも全て事実だよ。」
黒川さんは自嘲気味に笑った。
「香澄から連絡が来て、俺はすぐに向かった。場所は夜の公園だったよ。香澄はボロボロになった姿で公園のベンチに座ってた。あの時のお前みたいに。」
もう、聞きたくなかった。
自分の父親の愚かな過ちの話など、聞きたくない。
しかし、無情にも黒川さんは続けた。
「香澄は誰にレイプされたかも話さないまま…翌日、自殺した。」
「え…?」
「香澄はお前の父親にレイプされたショックで自殺したんだよ。」
香澄さんが…私の父親のせいで自殺した…。
「俺は様々な手を使って香澄をレイプした奴を探した。そして行き着いたのが明智政樹だった。8年前…正確には9年前か。12月24日、俺は復讐するために明智家に乗り込んだ。妻子がいながら女をレイプして自殺にまで追い込んだくせに、その日明智政樹は呑気に娘の誕生日を祝ってたよ。」
9年前の…12月24日。
私の誕生日。
グシャグシャになったバースデーケーキ。
「あの夢は…。」
あれは、夢ではなく私の過去の記憶だ。
私は全てを思い出した。