第7章 復讐の日
「シュリ、誕生日は何したい?行きたい所とか食べたいものとかある?」
「誕生日…。」
黒川さんにそう言われて気付いた。
今月は私の誕生日だ。
「黒川さんと一緒に過ごせればいいかな。」
「そっか。」
「私、家でご飯作って待ってるから。早く帰って来てほしい。」
「わかった。ケーキ買って帰るよ。」
その時何故か、あの夢を思い出した。
―――グシャグシャになったバースデーケーキ。
「…ケーキはいいや。」
「そうなの?誕生日なのに?」
「うん。なんかあの夢思い出しちゃうし。」
あれは夢で、現実とはなんの関係もないのに。
「シュリはさ、両親がいたら良かったのにって思うことある?」
「んー…まぁ、両親がいたらこんな寂しい人生送らなかっただろうなとか、親戚の家をたらい回しにされてた時は両親がいたらこんな思いしなかったのに、とか思ったよ。」
黒川さんは黙って私の話を聞いていた。
「でも、今は黒川さんがいるから寂しくないよ。ひなこもいるし。」
そう言って笑うと、黒川さんは私から離れた。
「そっか。」
それだけ言って、黒川さんはコートを羽織った。
「出かけるの?」
「うん、仕事行ってくる。今日は帰って来るから。」
最近黒川さんは、今日は帰る、帰らない、と教えてくれるようになった。
些細なことだが、それが嬉しかった。
「わかった。気をつけてね。いってらっしゃい。」
「いってきます。」
黒川さんが部屋から出て行き、私はもう一度寝ようと思って寝室に向かった。
黒川さんには話していないが、最近何故かあの夢を見ることが多く、少し寝不足気味だった。