第5章 不審な出来事
私が食事をしていると、黒川さんが飲み物のおかわりを取りに一人でドリンクバーコーナーに行った。
しかし、戸惑った顔をして戻ってきた。
「どうしたの?」
「シュリ、コーヒーのボタン押したのにお湯が出てきた。俺壊したのかな?」
「ああ、違うよ。多分コーヒーが切れちゃったんだよ。」
私は店員に声をかけてそれを伝えた。
「申し訳御座いません。少々お待ち下さい。」
黒川さんは椅子に座って溜め息をついた。
「マジで壊したかと思った…。」
本人には言わないが、ドリンクバーに振り回される黒川さんは可愛かった。
普段見せない表情を見せるし…。
店員が戻ってきた。
「お待たせ致しました。」
「ありがとうございました。黒川さん、もう大丈夫だよ。」
そう言うと、黒川さんはまたドリンクバーコーナーに行った。
今度は少し落胆した様子で戻ってきた。
「また何かあったの?」
「間違えてカフェラテのボタン押しちゃった。」
黒川さんは普段ブラックコーヒーしか飲まない。
面白くて爆笑してしまった。
「そんなに笑うことか?」
「いや…黒川さんもドリンクバーには勝てないんだね。」
「なんだよそれ。」
黒川さんは渋々カフェラテを口にした。
こんな些細なことが凄く幸せで。
黒川さんのこと、知れなくてもいい。
この人とずっと一緒にいたい。
でも、神様の悪戯はもう始まっていたんだ。