第5章 不審な出来事
きっと、何を聞いても"仕事"としか答えないだろう。
そう思ってあえて何も聞かなかった。
「俺がいない間、なんかあった?」
「え?なんで…?」
「いや、なんとなく。」
私は黒川さんにひなこの話をした。
黒川さんは煙草を吸いながら黙って話を聞いていた。
一通り話終えると、黒川さんが口を開いた。
「その子…結城ひなこちゃんだっけ?まぁ自業自得だよな。」
「なんでそんなこと言うの?」
「だってそうだろ?むしろなんでシュリは自分を裏切った相手のことをそこまで心配してんの?」
「なんでって…確かに一度は裏切られたよ。でもひなこは…私が初めて心を許せた友達だから。」
「ふーん…でももうお前はその件に首突っ込むな。」
「でもっ…!」
「また巻き込まれて犯されたりしたらどうすんの?それにお前には何もできないだろ?」
そう言われてしまうと何も言い返せなかった。
「ていうかシュリ、少し痩せた?」
「え?ああ、そうかも…。」
この2週間、ろくに何も食べられなかった。
「飯食いに行くか。」
「え、今から?」
「うん。何食べたい?」
「ファミレスでいいよ。」
「ああ、あのドリンクバーの所?」
黒川さんの中で余程ドリンクバーが印象に残ったのだろう。
あの時は本当に変な人だと思った。
「そうそう。ドリンクバーの所。」
「俺またあれやりたいと思ってたんだよね。行こっか。」
ドリンクバーをやりたいって…少し黒川さんが可愛く思えて笑ってしまった。
「なに笑ってんの?」
「いや、なんでもないよ。行こっか。」
黒川さんは不思議そうに首を傾げた。
私達は初めて一緒に行ったファミリーレストランに行くことにした。