第5章 不審な出来事
翌朝、黒川さんはいなかった。
仕事に行ったのだろう。
私は支度をして学校に向かった。
「シュリ…。」
校門の前で、後ろから声をかけられた。
この声は…。
振り返ると、予想通り。
ひなこが立っていた。
久しぶりに見るひなこは、随分とやつれた顔をしていた。
「ひなこ…。」
ひなこの顔を見て、数ヶ月前の嫌な記憶が甦った。
「なに?」
つい、口調がキツくなった。
すると、ひなこは突然泣き出した。
「な、なに?どうしたの?」
「シュリ…許されるなんて思ってないけど…あの時はごめんね…っ。」
あの時も、ひなこは平然と私を騙した。
また何か裏があるのではないかと思うと何も言えなかった。
「シュリ…こんなこと頼める立場じゃないって分かってるけど…お願い、助けて…っ。」
訳が分からず戸惑いを隠せなかった。
「何かあったの…?」
「あいつらに…ずっと犯されてるの…。」
「あいつら…?」
「シュンちゃんと…シュリをレイプした奴らに…。」
また、騙されるかもしれない。
もう関わらないと決めたのに…それでも私はこのまま見過ごすことはできなかった。
ひなこに裏切られたのは事実だ。
でもひなこは…人間不信だった私が初めて心を許せた友達だったから。