第4章 募る不信感と恋心
翌日、朝起きると黒川さんはいなかった。
昨日あの後私達は、帰りの車の中で一言も言葉を交わさなかった。
「ずっとさ、うちにいなよ。」
「お前がいなくなったら寂しいよ。」
「シュリをそいつの代わりとは思ってない。」
黒川さんに言われた言葉を思い出す。
「だってもう、この世にいないから。」
彼女は…亡くなっていたんだ。
いつ亡くなったかは分からないけど、恐らく私と知り合う前。
初めて黒川さんに会ったあの日、彼は言っていた。
何故、私に声をかけたのか聞いた時。
「俺が知ってる女に似てたから。」
それは、容姿が似てるということなのだろうか…。
黒川さんの言葉は曖昧だ。
少なくとも、私には黒川さんの真意が汲み取れない。
窓の外を見ると、今日は雨だった。
昨日はあんなに綺麗な夕陽が見れるくらい晴れていたのに。
思えば、黒川さんと出会った日も雨だった。
あの日、黒川さんが私を見付けてくれなかったら、私は今頃どうなっていたのだろう…。
黒川さんに会いたい。
会って、私にも分かるように言葉の一つ一つの意味を教えてほしい。
「…早く帰って来ないかな。」
無性に黒川さんに会いたくて、そんなことを呟いた。