第4章 募る不信感と恋心
黒川さんの射的の腕前は凄かった。
連続で4発当てて、見事にネックレスの箱を落としたのだ。
「す、凄い!黒川さん射的得意なんだ!!」
「うん、まぁ…。」
黒川さんは最後の1発を適当に放って、それはキャラメルの箱に当たって落ちた。
「やられたなぁ…お兄さん凄いね。」
店主が悔しそうにネックレスの箱とキャラメルの箱を黒川さんに渡した。
「どーも。はい、シュリ。キャラメルはおまけね。」
「ありがとう!これね、ずっと欲しかったの。」
「そうなんだ。付けてみれば?」
そう言われて、私は慎重に箱の中からネックレスを取り出した。
ピンクゴールドのチェーンに、小さな石が付いたネックレス。
留め金を通す穴が小さくて付けるのに苦戦していると、黒川さんが付けてくれた。
「似合うじゃん。」
黒川さんは優しく微笑んだ。
黒川さんに伝わってしまうのではないかと思うくらい、私の心臓は煩かった。
「あ、ありがとう。」
私は恥ずかしくて顔をそらした。
本当は気付いていた。
私はどうしようもないくらい、黒川さんに惹かれている。
でも私は、黒川さんのことをあまり知らない。
黒川さんも自分のことを教えてくれない。
それに黒川さんは、私が黒川さんの知り合いの女性…恐らくその人は黒川さんにとって大切な人で、その人と似てるから優しくしてくれるのだろう。
だから私は、自分の気持ちに蓋をした。
叶わぬ恋だと分かっているから…。