第4章 募る不信感と恋心
「青い薔薇の花束ねぇ…分かった。」
「笑わないの?」
「どうして?笑うこと?」
黒川さんは平然とそう言った。
「いや、私のキャラじゃないかなって…。」
「キャラとか一々気にしてんの?若いねー。」
黒川さんはからかうようにそう言って、私の頭をグシャグシャと撫でた。
昔から子ども扱いされるのは嫌いだが、黒川さんにされるのは嫌ではなかった。
育ってきた環境のせいか、いつも冷静でしっかりしていないと…と思っていたが、本当はこうやってありのままの私を受け入れてくれる存在を求めていたのかもしれない。
「黒川さん。」
「なに?」
「私ももっと…黒川さんのこと知りたいよ。」
「教えることなんて何もないよ。」
黒川さんはニッコリと笑った。
「じゃあ、下の名前…教えて。」
「花子。」
「絶対嘘でしょ!」
もういいや。
そう思って黒川さんに背を向けた。
背後で黒川さんが喉を鳴らして笑っている。
「黒川さんずるいよ。いつもそうやってはぐらかしてさ。」
「何でそんなに俺のこと知りたいの?」
そう聞かれると…何故だろう。
知りたい、というよりも、教えてくれない事が寂しいのかもしれない。
でもそんなこと言いたくなかった。
「分かんない。」
私の精一杯の意地だった。