第4章 募る不信感と恋心
「そういえば、シュリの誕生日っていつ?」
「12月24日。」
「…12月24日?」
一瞬、黒川さんの顔付きが険しくなった。
何かあるのだろうか…。
しかし黒川さんはすぐにいつもの表情に戻った。
「クリスマスイブが誕生日って凄いな。」
「まぁ、お祝いされたことなんて一度も…。」
そこで私は過去を振り返った。
両親が事故で死んでからはお祝いされた事は一度も無い。
しかし、その前はどうだったのだろう…。
黒川さんには話していないが、私は両親が死んだショックで当時の記憶、そしてそれ以前の記憶も失ったのだ。
両親の死因も親戚から聞いただけで、実際には当時の記憶は無い。
「…一度も、ないけどね。」
「ふーん。じゃあ今年は俺が祝うよ。」
「え?黒川さんが?」
「うん。プレゼント考えといて。何でもいいよ。」
そう言われ、私はずっと胸に秘めていた夢を話してみることにした。
「私ね、青い薔薇が好きなの。それで…青い薔薇の花束をプレゼントされるのに憧れてたりする…。」
自分のキャラではないことくらい分かってる。
きっと笑われるだろう。
恥ずかしくて、黒川さんから視線をそらした。