第4章 募る不信感と恋心
黒川さんとの同居生活が始まったが、彼は家を空ける事が多かった。
理由を聞いても"仕事"としか答えない。
別に私達は恋人ではない。
お互いに必要以上に詮索する必要は無いし、そんな権利も無い。
ある日、珍しく黒川さんが朝から家に居る日があった。
「黒川さん、朝ご飯食べる?」
そう聞くと、黒川さんは苦笑いをした。
「俺、朝は食欲ないから。コーヒーでいい。」
そう言われ、インスタントだがコーヒーをいれて黒川さんに渡した。
「はい。インスタントだけど。」
「おー、ありがと。」
黒川さんは煙草を吸いながらコーヒーを飲んだ。
私は自分の分の朝食を作り、食べた。
黒川さんは基本的に無口だ。
かといって、テレビを付ける訳でもなく、スマホをいじる訳でもない。
いつも、煙草を吸いながら窓の外を眺めている。
今日もそうだった。
私は私で、仕事探しに奮闘した。
毎日スマホで求人サイトと睨めっこをする日々。
すると、黒川さんが私からスマホを取り上げた。
「なに?」
「そんな急いで探さなくていいじゃん。」
「でも…いつまでも黒川さんにお世話になるわけにはいかないし…。」
「俺はお前がいてくれた方がいいけどね。」
その言葉に驚いたのと同時に、胸が高鳴った。
「からかわないでよ。」
そう言って黒川さんからスマホを取り返した。
「本心なんだけどなぁ。」
そう言って黒川さんは私の隣に座った。
飄々とした態度のせいか、そんなことを言われても信じられない。
それなのに、ドキドキしている自分がいる。
「なんで私がいた方がいいの?」
思いきって聞いてみた。
「んー、特に理由は無いけど、なんか落ち着くから。」
それは、私が黒川さんの知り合いの女性に似ているからだろうか…。
そう思うと複雑な気持ちになった。