第2章 恐れていたこと
「…はい。」
久しぶりに聞く、黒川さんの声。
少し緊張する。
「あ、あの…シュリです。覚えてる…?」
「ああ、シュリか。久しぶり。」
「久しぶり…。」
覚えていてくれたことに一安心した。
本題に入りたいが…やはり話しづらい。
妊娠したからおろすお金を貸してほしい…なんて。
「シュリ?どうしたの?」
「えっと、その…妊娠、して…。」
「…ああ、あの時の子ども?」
黒川さんは特に驚きもせず、そう言った。
「うん…それで、おろそうと思うんだけど…。」
他人にお金を貸してほしいと言うのはやはり心苦しかった。
「今から行く。」
黒川さんはそれだけ言うと電話を切った。
彼は察しの良い人だ。
恐らく私の言いたい事が分かったのだろう。
頼る側だというのにきちんと伝えることも出来ず、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
黒川さんが来たら頭を下げてお願いしよう。
私はアパートの前で黒川さんを待った。
しばらくして、見覚えのある黒いベンツがアパートの前で停車した。