第2章 恐れていたこと
ある日、夕飯を作っていると、突然吐き気に襲われた。
トイレに駆け込んだ私の頭に、恐れていたことが浮かんだ。
まさか…妊娠?
よく考えると、あれから生理も来ていない。
私はすぐに検査薬で調べた。
「…嘘でしょ…。」
突き付けられた現実。
私は妊娠していた。
レイプされた時にできたとしか考えられない。
産むという選択肢は有り得ないが、おろすには纏まったお金が必要だ。
私にそんなお金は用意できない。
どうしよう。
その言葉が脳内を埋め尽くした。
その時、忘れかけていたある人物を思い出した。
黒川さん…彼ならお金を持っていそうだし、もしかしたら貸してくれるかもしれない。
私はすぐに黒川さんの電話番号が書いてあるメモ用紙を探した。
引き出しの中からメモ用紙を見付け、震える手で番号を押した。
都合が良いのは分かっている。
あれから一度も連絡せずに、彼の存在すら忘れかけていたというのに、こんな時に思い出して頼るなんて。
しかし、他に頼れる人はいない。
藁にもすがる思いで電話をかけた。