第2章 ひみつのおしろ
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「あ~たのしっ!!」
漫画にゲーム、おもちゃなどでひとしきり遊んだ少女は、
遊び疲れたと見えて、ジュースやスナックをつまんでいた。
「そっか、よかったねぇ。好きなだけあるからね?
おじさんさ、ちょっとだけ用事があるから、
少し家を空けるけど、ちゃんとお留守番、できるよね?」
「もちろんよ!わたしにまかせて!」
「そう。いい子にしてたら、ごほうび、あげるからね。
誰が来ても、ドアを開けちゃだめだよ。」
「わかった~!!」
ぴしり、と敬礼しながらポリポリとお菓子を食べる。
男は、少女を一瞥してから部屋を出て行った。
バタン、と音がしたからきっと家を出たのだろう。
少女は依然として、ゴロリと寝そべりながら漫画を読み、
菓子類をつまんでいた。が、
そう長くない内に起き上がることとなる。
「もう、おうちにかえりたいなぁ……。」
あれ、でも。おうちって、どこだっけ。
わたし、どうしてくらしていたのだっけ?
「ううん、わかんないなぁ……
むずかしいことはかんがえるのもむずかしいな」
そうして、また少女はゴロン、と寝そべった。
と、目に入ったのは画用紙とクレヨン。
「おえかき!!」
さっそく画用紙を広げ、クレヨンをまじまじと見つめる。
「なにかこうかなぁ……ん~……」
少女は考え込み、しばらくクレヨンを見つめていたが、
たまたま目に留まった青色に、ん?と何かを感じたようだった。
「あお……なんだっけ?りぼん、これ、りぼんのいろだ!」
何か重大な発見をしたように、少女は顔を見開いた。
「そういえば、さっきのえほん。ぴんくいろのりぼんのどれすをきてた、おひめさま。
わるいひとにさらわれてしまうんだけど、
さいごには、かっこいいおうじさまがむかえにきてくれるの!
わたしにも、おうじさまがきてくれればいいのになぁ……
わたしのすきな、あおいろのふくをきてたらすてき!
そうだ!おうじさまをかこう!」
*
「できたー!」
完成したその絵には、
青いパーカーとサングラスをかけた青年が描かれていた。
傍からみれば、ただの色とりどりの丸の集合体にしか見えないのだが。
「おうじさまのなまえは~、……からまつ!」
なぜか、するりと、言葉が浮かんだ。
「か、ら……ま、つ……?」